新型コロナ対策の詳細と財源対策

2020年06月28日

(1)宇都宮けんじさんは、「コロナから命を守る検査体制と医療を充実する。損害を被っている中小企業、非正規、フリーランス、学生の生活保障措置をとる。コロナ医療を弱体化させる都立公社病院の独立行政法人化を中止する。」との施策を公約しています。

(2)小池都知事は、6月26日には、新型コロナ感染が拡大しているが、「財源がないので、営業自粛要請はできない。」と述べたと伝えられます。「自衛」発言に続き、損害を被っている都民を冷たく見放す言葉であると感じられます。

(3)しかし、宇都宮けんじさんが提言しているような政策実現のための財源は以下に述べるように十分用意できると思いますので、法定2号ビラの予算(財源)の詳細な説明をします。具体的には以下の3つの柱で財源を確保することであり、多額の地方債は不要です。

(4)①外環道の計画は都の負担分だけでも兆円単位の大事業です。住民は強く反対していますし、不要不急の事業です。このような道路建設などの巨大開発を延期・中止することで兆円規模の予算を生み出すことができます。

(5)②また、残りが800億円ほどしかないとされた財政調整基金だけでなく、特定目的基金や決算剰余金などを合わせると約9000億円の基金が利用可能です。この基金は条例を改正し、特定目的を変更することによって「新型コロナ対策基金」とすることができます。

(6)③また、医療機関の財政支援などは本来国が行うべき財政支出であり、その抜本的強化を国に提言していきます。

(7)山本候補の提起された地方債による資金調達については、山本候補の言われるようなやり方では実現困難だと考えますが、地方財政法5条5号に基づく「社会資本の整備」の目的であれば、都は総務大臣の同意を得て地方債で公的資金を調達することが可能です。

(8)すなわち、現実に予算を投じて建てる計画であった公共施設の建設のために地方債を発行するのです。自前の予算で支出する予定だった公共施設の建替のための予算をコロナ対策に置き換えて活用することで振替の規模にもよりますが、兆円単位の資金調達が可能です。

(9)これだけの財源を確保し、これを実際にコロナ禍によって損害を受けた事業者と、非正規雇用労働者・フリーランス・学生などの個人に、損害額に応じて補償することによって、その生活と生業を守り、ひいては東京の経済を守ることができると考えます。

(10)どれだけの資金を補償すべきか、補償できるかは、コロナ禍の状況が現在進行中であり、被害の全体像が確定していないことからも確言することはできません。

(11)しかし、実際に生じている損害に応じて、これらの事業と個人の生活を維持するために必要な資金を、貸付ではなく、生身の資金として供与する方法で、救済を図るのです。

(12)山本候補は、コロナ感染症を都が災害に指定し、災害対策のための地方債を15兆円発行して、対策に充てるという財源案を示されています。この点、地方財政法5条は5号の建設債以外に4号で「災害救助事業費」などについての起債を認めています。

(13)立憲民主党や一部の弁護士が、コロナ禍を「災害救助法の災害として扱うべきだ」と主張しており、コロナ禍の深刻な実情をみれば、耳を傾けるべき見解ではあります。

(14)しかし、4月28日の衆院予算委員会で、野党のコロナ対策に災害救助法を使うべきではないかという質問に対して、新型コロナ担当の西村康稔経済再生相は「(内閣)法制局と早速相談したが、災害救助法の災害と読むのは難しいという判断だ」と説明しています。

(15)したがって、山本候補が示すコロナ対策のために直接支出する地方債については、総務省の同意を得て、起債することは絶望的であり、実現のためには法改正が必要です。直ちに実現する課題ではないのです。

(16)総務省が20兆円の起債を認めたと山本候補は発言されていますが、それはあくまで東京都の財政状況からみた、起債限度のことを述べているだけであり、建設債でないコロナ対策についての起債を総務省が認めているわけではありません。

(17)地方公共団体が国・総務省と協議し、同意を得られなかった場合は地方財政法5条の3第9項に基づき、「地方議会に報告」後に「同意のない地方債」として発行することができますが、都議会での多数の賛成が得られると思えません。

(18)東京都が国と議会の同意を得ないで地方債を発行するという最後の手段はあり得ます。しかし、そのような起債に全国の他の自治体や地方債を引き受ける金融機関の理解が得られるとは思えず、資金調達ができるか疑問です。

(19)宇都宮けんじさんは、山本候補が提唱されるような障害の多い方法に頼らずとも、上記のような3つの柱の財源対策によって約3兆円程度の財源を生み出すことは可能だと考えています。<完>